#1 内藤芳元(戸隠そば吉原)

吉原商店街にゆかりのある人々の偏愛や視点を、本の選書をとおして探るシリーズ。本棚を見ると人となりが見える…とまでは言いませんが、読むためだけならば物理的に “本” を所有する必要すらなくなったいま、どうしても手に入れておきたい飾っておきたい、はたまた絶対に捨てられなかったり一生忘れられない本があることは、その人の表現の一部とも言える気がするのです。

記念すべき第1回は「戸隠そば吉原」店主の内藤芳元さんに伺いました。

 

BOOK 1 : 『マックイーンズマシンズ』日本語版

Matt Stone (著), 中村 恭一 (翻訳)
和書 / 2008年発行 / スタジオタッククリエイティブ
※絶版

バイク/車愛好家として知られた往年のハリウッド俳優、スティーブ・マックイーンの愛車344台を掲載した、いわゆる趣味全開本。研究者が各愛車の仕様なども事細かに記述し、マックイーンの写真とともに紹介している。

「この本との出会いは二十歳ごろ。渋谷に通うようになって、当時深夜まで営業していて洋書もたくさん扱っていたタワレコで本を買うのが定番でした。最初は英語版を見つけて買いました。その後調べたら数ヶ月後に日本語版が出るということでそれも購入。だから日英どっちもうちにあるっていう。
マックイーンは映画俳優として有名だけど、バイク乗りの側面もあって運転もめちゃめちゃうまい。当時映画会社からレース出場を止められていたのに、わざわざ偽名を使ってまで草レース(プロでなく一般市民が参加するもの)に出るようなクルマ愛に溢れた人でした」(芳元さん)

 

BOOK 2 : 『McQUEEN -Movie Icons-』

洋書 / 2007年発行 / TASCHEN社
※絶版

『マックイーンズマシンズ』のあと、やはりタワーレコード渋谷店で購入。マックイーンが出演したさまざまな映画作品のスチルカットを収めた写真集。アート・デザイン関連書籍で世界的に有名なタッシェン社から刊行。

「好きな写真というのは選ばないようにしてて、時々ふと眺めて『知ってる、好きだな』って思いながらページをめくって楽しみます。マックイーンといえば映画『大脱走』。小学生の頃、おじいちゃんが映画を自宅で見ていた時に横にいて、国境の有刺鉄線をバイクで飛び越えるシーンを見て『バイクってかっこいい・・!』って。それ以来僕はバイクにハマり続けてます。あ、そのだいぶ前に仮面ライダーを見てたのもあるけど(笑)スーパーヒーロー的な人が好きなのかも。街を襲ってきたインディアンをマックイーンが追い出すようなコテコテの西部劇もいいです」(芳元さん)

 

BOOK 3 : 『サイボーグ・ナチュラルボーンキラー・スペシャルエディション』

和書 / 2013年発行 / cyxborg
※絶版

2004年から2010年代半ばにかけて “横ノリカルチャー” のフリーペーパーマガジンとして発行された雑誌『cyxborg(サイボーグ)』。曰く「完全なジャケ買い」だそう。

「確か、買った2013年当時は横ノリカルチャーがアツくて、スケボーショップ行ったら置いてあったのかな。日系アメリカ人のレジェンドスケーター、スティーブ・キャバレロのトレードマークが竜だから表紙にピンときたのもある。ドラゴンモチーフのものを買う時はだいたいキャバレロのことを考えてます。

今って雑誌の1ページあたりの情報量が少ないものが多いけど、これはどこをめくっても写真や文章もめいっぱいでアルバムみたい。こういう雑誌は買ってしばらくはあまり読まずにビジュアルだけ楽しんで、半年かけて少しずつ文章を読んでいきます」(芳元さん)

 

BOOK 4 :平間至写真集『NO MUSIC, NO LIFE』

平間至 撮影
和書 / 2004年発行 / マガジンハウス

言わずと知れたコピーとともにタワーレコードの広告に使用された写真7年分を一挙収録。意外なミュージシャン同士の共演があるのも音楽ファンにとって嬉しい。

「なんで買ったか・・・実はあまり理由はなくて。本屋には1万円札を握りしめて『これで1冊なにか買う』って決めて出向くスタイル。『これいい』って反射的に思ったら買う、悩むくらいだったら買わない。そういう買い方のほうがあとからより楽しめるんですよね。表紙にいろんな書体の、誰もが知る他店ロゴのパロディで『NO MUSIC, NO LIFE』が並んでるのが面白い」(芳元さん)


SELECT POINT

INFO

戸隠そば吉原
静岡県富士市吉原2丁目11-12
IG: @10594yoshiwara_hogan
Facebookページ: facebook.com/10594yoshiwara

今日持ってきた4冊は僕の趣味(バイク、サーフィン、音楽鑑賞)をカバーしてます。

バイクは良いものに手を入れて長く乗るタイプ。最近国産の少し故障があるイイバイクをオーナーさんに勧められて買ったので、乗れるようにちょっとずつ直してます。良い状態のバイクを手に入れてすぐ乗るのもいいんだけど、それだと愛着湧かないし、ディテールを知らないとどう取り扱っていいかわからない。昔のバイクの方が構造が簡単でかえって取り扱いが楽だったりするので、バイクいじりは好きですね。

音楽はジャンルや時代色々好きだけど、特に90年代は面白いですよね、いわゆるエアジャム世代って言われてた人たち。リアルタイムで聴いてたのは2000年代あたま、小学校高学年頃。当時はCDが買えないから市の図書館でCDレンタルしてました。結構いいの置いてるんだよね、ハイスタとかHUSKING BEEとか。2歳上の兄貴の影響もあって少し上の世代が好む音楽が好きです。

今日紹介した本もほとんどそうだけど、僕にとって一昔前の渋谷のタワレコは本を買う場所。近所の本屋も行くけどストリート雑誌の立ち読みが中心でした。BOONとか懐かしい!オーリーもいい雑誌だったなあ。僕が10代の頃は同じ流行に同級生全員が夢中になるってことはあまりなくて、それぞれで好きな雑誌や音楽、カルチャーがあって、それを囲む仲間がいる時代。僕は特に、自分らの世代よりも少し背伸びして見ていた世界があった気がする。その時響いたものが今の自分を作ってると思います。

 

取材/文:YCCC(特別協力:深澤祐太)


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