YCCC完全独断偏見編集!

吉原のアルキカタ 2024

「吉原=遊郭?花魁?歓楽街?京都??!」

いえ、実は静岡県富士市(※)に「吉原商店街」があるんです。

歴史の流れの中で独特の発展を遂げ、関わる人それぞれの
切り取り方次第で千差万別の「MY吉原」像ができる街。
そこで、あえてYCCCの独断と偏見に満ちた『吉原のアルキカタ』をご紹介します。

これを手掛かりに、あなたの「MY吉原」を見つけてみよう!

※よく間違われますが、山梨県富士吉田市ではありません

なんだか微妙にアクセスが不便だが、
だからこその発見もあり?

吉原に向かう

 

江戸時代には多くの商人や旅人の往来で賑わった宿場町も、高潮による壊滅的な被害を二度も受けて、かつては海の方にあったまちが内陸部にまちが移動。そんな歴史もあってか交通アクセスの不便さがちょっとややこしい。

JR線からの各駅からは歩くにはちょっと遠いが、歩けなくはないといったところ。どの町にも言えることではあるが歩いてみないとわからない楽しさも多い。遠方からくる方にとっては、建物に見え隠れする富士山ですら魅力的かもしれない。僕は「私用橋」「勝手橋」と言われる橋を探して歩いたりしている。富士山の湧水によって水資源が豊富だった富士市は工場も多く、その工場と連動するように吉原エリアにはたくさんの用水路や川がある。用水路と言っても水量が多く、どこも比較的きれいにたくさん水が流れているのは都会の人からしたら珍しいらしい。(アーティストユニット・アグネス吉井談)

【もやよし-62】静岡県富士市(吉原本町/田子の浦)|もやよしブログ

歩く以外の選択肢は何と言ってもローカル線<岳南電車>の利用だ。岳南電車には「JR吉原駅」で乗り換えることができるのだが、本数が非常に少ないので乗り換えタイミングを調整するのがちょっと難しく、友人を招く時に安易な紹介してしまうと約束の時間に落ち合えないことも(笑)ところが、根強いファンが多い路線でもあり、工場の中を線路が通っていたり、いまだに「硬券」が発行されているのもおもしろい。世にも?珍しい「夜景電車」なども時々やっている。

岳南電車時刻表|岳南電車株式会社

最近「JR吉原駅」北口を降りてすぐの場所に新しく「Jin Cafe」もできた。乗り換えタイミング次第では寄ってみるのもありだろう。

バスを利用する場合は新幹線駅の「新富士駅」もしくは、在来線の「富士駅」で下車し、「ぐるっと富士」を利用すると吉原商店街まで25分ほどで到着。いわゆる環状化した路線なので、右回りでも左回りでも吉原にはたどり着く。

「ぐるっと富士」バス時刻表

安定のビジネスホテルから温かみある旅館、
ゲストハウスまで。朝食どころも紹介

吉原で泊まる

「宿場町」として栄えたわけなのだから当然、宿はたくさんあるのだろうと思うかもしれないが意外とそうでもないところが歴史の残酷さを物語っている。無論、京都から東京まで歩く時代じゃないし、前述の通りなんせアクセスが悪いので、わざわざ宿泊場所として選ぶ土地でもないかもしれない。
一方で昭和以降、工業都市としては栄えてきた歴史もある。製紙工場をはじめ自動車関連企業なども市内にあるので、出張でこの地を訪れる方も多い。また最近の富士登山ブームによって少しづつ観光客も足を運びはじめている。いわゆる「観光地」として成熟していない分、刺さる人には刺さるディープな宿があるのかもしれない。というわけで、

YCCC勝手におすすめユニーク宿5選!

14 Guesthouse Mt.Fuji

地域密着度 ★★★★★

吉原商店街内。全体のベッド数は少ないが女性専用ドミトリーもあり、お一人の方も安心。こじんまりしているが清潔に保たれているのも好印象。ゲストハウスとしては少しだけお値段高めな印象があるものの、オーナーが地域情報にかなり詳しく飲食だけでなく、ガイドブックには載っていない様々なローカルネタを色々教えてくれるからお値段以上。商店街で『唐揚げ屋十四番』も営んでいる。ウェブサイト

HOTEL 24 in 富士山

安定感 ★★★★★

吉原商店街の裏通りにあり、徒歩数分というアクセスの良さ。無料の朝食ビュッフェが人気で、いわゆるビジネスホテルの朝食ではあるがカレーが人気らしく、出張で富士に訪れる時は必ずココに泊まると言う方も多い。ウェブサイト

Tabist ゆ縁の宿 ふじみ

ホッとする度 ★★★★★

吉原商店街から徒歩約8分。畳張りの部屋が揃う昔ながらのビジネス旅館。新しいわけではないがどことなく落ち着く実家のような安心感がある。YCCCがこれまで吉原に招いたアーティストやゲストの中でもハマった方が多め。ウェブサイト

富士ビジネス旅館 美波

富士山LOVE ★★★★★

吉原商店街から徒歩約3分。こちらも客室は和室タイプのみ。昭和〜平成の空気を少し残したレトロな館内と、手作りの朝食が人気。館内各所に富士山の写真が飾られていて、登山のオフシーズンや天気が悪い日でも富士山をたくさん楽しめる穴場スポット。余談だが ウェブサイト に漂う風情が、非常にいい。

鯛屋旅館

歴史とディープさ ★★★★★

吉原商店街にあり300年以上の歴史を誇る宿。清水次郎長・山岡鉄舟の常宿としても知られている。現在はビジネス旅館として出張の方などの利用が多い。客室は昔ながらの和室タイプのみの素泊まりがメインで、宿泊なしの日帰り入浴も可。一階には手打ちの蕎麦屋さんが併設されていて「スタミナそば」などの一味変わった蕎麦も人気。もちろん蕎麦屋さんのみのご利用もOK。一階奥にある書架は、富士市・吉原の風俗や歴史文化を知ることができる貴重書も盛りだくさんだ。ウェブサイト

セットで行きたい「朝食どころ」

喫茶ミマスヤ
吉原商店街から徒歩8分 7:00〜(無休)
Instagram @mimasuya_coffee

アラビカコーヒー 富士緑町店
吉原商店街から徒歩12分 9:30〜(無休)
Instagram @arabicacoffeefuji

chihiro totugi
吉原商店街内 8:00〜10:59 以降ランチ営業(定休日:火水 ほか不定休あり)
Instagram @chihiro_totugi

コミュニティスペースANTERA
岳南電車「吉原本町駅」すぐ 7:00〜10:00(月水金のみ営業)
Instagram @anterayoshiwara

田子の浦港 漁協食堂
吉原商店街から車で10分/バス「ぐるっと富士」バス停[吉原本町]→[イオンタウン富士南]下車→徒歩22分
10:30〜13:30(4/1~12/28の毎日営業)
Instagram @tago.no.ura.sirasu

やっぱりここは人も◯◯も面白い!

会いに行く

旅先での一番の醍醐味はなんといっても「人との出会い」。ガイドブックには載ってない・・・どころか地元の方々でさえ「え?」って驚くような “面白い人” がたくさんいるこの商店街。そしてそれを知ってか知らずか、なぜか一風変わった店主が集まり始めて新規出店が相次いでいるここ数年の吉原。

私たちYCCCがこれまでに招いた県外芸術家からも一番いただいた感想もまさに「このまちは人が面白い!」でした。そんな私たちがおすすめするのは人、そしてここにしかない◯◯。ぜひ、出会ってみてください。

っ込みたくなるほどの大盛り
保志奈食堂(富士市吉原1丁目3-10)

「あそこは一見の価値あり」と地元民も言うほどのボリューム満点食堂。そしておそらくメニュー自体は100項目くらいあるのではないだろうか、丼ものからラーメン、カレー、各種定食まで。なんといってもセットメニューの幅広さがすごく、ミニラーメンとミニ親子丼といった組み合わせを全通り選べるのだ。しかし僕はなぜか毎回自動的に「肉チャーハン」を注文してしまう。肉チャーハンというと、お肉が多めのチャーハンをイメージすると思うのだが保志奈のそれは違う。焼肉とチャーハンのセットなのだ。さらにそこにラーメンもついてくる。そして「セットのスープをサービスでラーメンに変えときました」と優しく添えられて提供されるのだ。いまだにそれがラーメンじゃなかった(つまり普通のスープが出てくる?)ことは一度もないのだがそういうものなのだろう。ちなみに「ミニ」とついたメニューは言うほどミニでない。ローカル食堂でお腹いっぱいになりたい方は是非。

あ、くれぐれもカレーとラーメンを同じ蓮華で食べないこと!(YCCC田村)

趣味と地元愛がつまった
蕎麦屋らしからぬ蕎麦屋

戸隠そば吉原(富士市吉原2丁目11-12)

音楽とバイクを愛する根っからの趣味人である内藤芳元(本名、通称Hogan)が店主を努めるお蕎麦屋。蕎麦屋のBGMには似合わぬハードコアやパンクロックがながれている時もあり、お店の雰囲気もいわゆる「そば屋っぽい感じ」ではないと言えるかもしれない。しかし「吉原で蕎麦といえば」と言われれば必ず名前の挙がる名店でもあり、名物「おろしそば」は非常に人気だ。

親の世代から引き継いだお店ということで昔からの根強いファンも多く、ハイスタの流れる店内で80歳くらいのおばあちゃんが美味しそうにお蕎麦を食べていたりする。店の壁には店主お気に入りアーティストの意味深なメッセージがこもった額装作品、そして吉原祇園祭の際に各町内で配られる手ぬぐいがたくさん飾られており吉原愛も感じる。

自身もお酒好きということで、メニューに載っていない日本酒なども置いてあるため、尋ねてみるとレア酒に出会えることも。また、店主の兄で格闘家の内藤太尊もシーズンオフ時に店頭に立っている。トレーナーとしても活動していることもあり、店内では筋トレや体づくりの相談がてら蕎麦を食べにくる、胸板厚めのお兄さんたちが集まってワイワイしていることも。(YCCC田村)

あの頃のハイカラなおばあちゃんち
創作酒肴 雪月花(富士市吉原2丁目11-30)

のれんをくぐると流れるのは1920-40年代のアメリカンジャズ、そして古民家を女将の千文さん自身でほぼ改装したという昭和レトロな魅力をつめたこじんまりとした空間が現れる。カウンター越しに女将と話せば溢れ出てくるのは、吉原祇園祭のこと、今や少しずつ薄れつつある吉原弁、吉原市時代の貴重な史料本や地図などこの街に積み重なった記憶や文化など。カウンターに隣り合った初めましてのお客さんもすぐ仲良くなれてしまう千文マジックがはたらきます。女性でも、お一人様でも、楽しくお酒を楽しめる居心地の良さです(YCCC瀧瀬)

4つの業態の混合体
Neo HEAVEN(富士市吉原4丁目2-7 アラビアンナイトビルライカIII 1ーD)

際立つ外観で地元でも有名な飲食店ビルにひしめくスナックやバーの中でも、ここのジャンル名のつけ難さは格別。喫茶、カフェ、スナック、ライブバーの混合体なのだ。

入ってすぐに電子ドラム、ギター複数本、電子ピアノ、ウィンドチャイムにボンゴ、そしてスタンドマイクが並ぶ。かと思えばそのすぐ先にはカラオケマシンにソファ、奥へのびるカウンター席がある。近隣でカラオケスナック「ヘヴン」として2000年代初頭から営業していた店の系列店として現在地で開業、「せっかくならライブもできる場所を」という店主の意向でこのような形態に。マイクは低音が響く一般的なカラオケマイクと異なり、高音が伸びやすいライブ仕様だ。音響はライブ用機材、マスターの手動ステージ照明&スモークDJでプロ級ライブ気分を味わってみよう。(YCCC瀧瀬)

バンド名かつ店名
INARI(富士市吉原4丁目2-7 アラビアンナイトビルライカIII 1ーG)

「INARI」というのはそもそも、富士宮出身のメンバーによるバンドの名前である。バンドの名前=お店の名前ということだ。メンバー全員が富士宮(隣市)出身なのに、なぜココで店をやっているのか?というあたりに吉原の魅力があるような気もするのだが詳しくは聞いたことがない。とにかく、バンドマンがやっているバーである。本気で音楽をやっている彼らなので週末はライブなどの都合でやっていないこともあるので要注意。普段の営業で主に店頭にいるのが、バンドではベースを努めるせんしろう、通称せんちゃん。決してオーセンティックなバーではないのだが、絶妙な居心地の良さがある。商店街の端っこにあるため、飲んだ後の最終地点的にここにたどり着く人も多いのか、商店街の店主や友人たちが偶然いつのまにか集まっていたりもする。(YCCC田村)

屋上からの極上の眺め

「振り向けばいつでも富士山がある」富士市民であれば誰でもそう言うが、この風景を見るならおすすめは商店街最大の立体駐車場「ほんいちパーキング」の最上階である。長屋式ビルが連なる商店街の屋上から始まり、人々の生活がひしめく郊外都市から北へ延びた先の富士山、ゆるやかに愛鷹山へ連なっていく稜線、そしてそれらの上を悠々と流れていく雲。駐車場利用車両に気をつけながら、さまざまな時間帯や季節に少し覗きに行ってみては(YCCC瀧瀬)

美しいおもしろ水源、田宿川と和田川

いま、商店街の一部店主たちの中で密かに話題となっているのが水と川である。「ちょっと川を見にいこう」といって休日に川沿いを歩いて、たわいのないその美しさに感動したりする。

さて吉原には「おもしろ水ポイント」がいくつかある。例えば、田宿川には湧き出る水の影響により川が一部分だけ逆流してしまうところがあり、枯れ葉を川に落としてみて「おお!ここで流れが変わってる!」とかってはしゃぐ。かなり地味な遊びではあるが「川を調べればまちの歴史が見えてくる」と言っていた小学校の先生を思い出したりしている。

観光地になるわけでもなく、近所に住んでいる人ですら知らないかもしれないが、まさしくコンコンと住宅街の隙間あたりから水が湧いているところが田宿川周辺には多数点在している。実はこの吉原エリアは富士山のかつての噴火による溶岩の「末端崖」(溶岩の端っこ)にあたる。つまり地中深くの溶岩の隙間をぬうように雪解け水が流れてこの辺りに湧き出るのだ。だから川沿いを歩くと溶岩が突然あらわれたりもする。他にもオモシロ水ポイントが沢山あるのだがここでは割愛するとして、興味のある方は是非足を運んでください。
ちょっと予習がてら気になる方は、以前にYCCC主催で企画した
こちらのツアーの様子もどうぞ。

偏愛のつまった街歩きルートで
街をディープに知ろう

もっと探検

YCCCが2023年に開催したアートプロジェクト「HELLO YOSHIWARA 〜吉原商店街に出会おう!〜」から生まれた、商店街店主の偏愛がつまった4つの街歩きツアールートをご紹介。
これであなたも吉原上級者!?

西川卯一(東海道表富士)「富士山の先端を辿る」

富士山の地表の先端が吉原商店街の北方200メートルの位置にあり、そこから地中に潜り込み、田子の浦の水深100メートル付近に実際の先端が露出しています。海中では大量の湧き水が出ていて富士山からの大量のミネラルが放出され、駿河湾名物のしらすや桜えびを育て上げています。
地表の先端には冷えて固まった富士山の溶岩流が実際に見える場所や、豊富な湧き水、水神の祠などがあります。
また、田宿川は富士山の湧水が大量に湧き出ていて、一本でありながら途中で流れの向きが逆転する分水地点があります。大雨の時などは二ヶ所で川の向きが変わったりもする面白い川ですが、その特殊さを地元の人もあまり気付いていません。いつかブ◯タモリで使ってもらいたいと思いつつ、のんびり歩いてみてください。

色男(色男とチャイコ)「自分にとってのリアルは誰かにとってのフィクション」

吉原商店街では、6月に開催される大規模な祝祭、吉原祇園祭という確固たる商店街のあり方が確立され、そこを主軸とした独自の多様性から、環境に影響されないガラパゴス的な成長をし続けていると感じています。その反面、時代の流れによる規制や、人の流れで消えてしまった文化もあります。もちろん地方商店街特有の過疎化のあおりを受けてはいます。しかし、過疎化が進んだ事により、極端な商店街の改修もなかった為、現在でも至る所に10〜20年前の状態をそのまま残したレガシースポットも多くあります。今回は、商店街の店主として語り手となりましたが、僕自身が幼少からこの商店街と共に成長して来た経緯があります。そこで今回は、時代の流れにより消えてしまった文化と僕が成長と青春を謳歌した思い出を元にこの商店街を知るお話をしようと街歩きを企画しました。

小林雅章(セレクトショップFOX)「うらろじーズハイ / 風景は平等 / ボロカワとえんとつ」

お話をいただいた時に、マニアックな方が面白そうだと思ってただひたすら「個人的に好きなところ」を意識してルートを作りました。『うらろじーズハイ』は、吉原は裏路地が多くて、毎日観察してると実は咲いてる花だったり、そこにある風景が好きだから。『ボロカワ』は、いつからかボロさやサビつきに風情を感じるようになって。いろいろ洗い出してみたら沢山キーワードが浮かんで、YCCCさんに選んでもらおうと思ったら全部採用してもらえました(笑)
「風景は平等」は(YCCCとの)会話の流れでふと。モノや場所は変わらないけど、見る人や角度、切り取るイメージによって感じ方が変わるのが面白いなと思ってつけました。

千文(創作酒肴 雪月花)「つわものどもが夢のあと」

昭和50年代の吉原商店街をタイムスリップしてご案内します。当時の地図と今の地図を見ながら 今では想像もつかないかもしれない賑やかなりし吉原商店街をご案内。当時の商店街は大きな百貨店そしてアミューズメントパーク。普段着から少しでも着替えて行く場所。「街に行く」美味しいもの 綺麗なもの 高級なもの 面白いもの…「街」は楽しかった。

つわものどもが夢のあと…でも 街は今も新しい夢を作り出している。なんてことを思いつつ 難しいことは考えずにまずは昔話。

HELLO YOSHIWARA 2023 〜吉原商店街に出会おう!〜特設サイト

*本ページは全て吉原中央カルチャーセンターの独断と偏見による、多少ニッチな編集のもと情報を掲載しております。
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