平岡尚子「INSIDE FUJI」
富士山を「内部・環境」から撮る
商業写真撮影の傍ら個人制作も積極的に行い評価が高まっている若手写真家 平岡尚子による短期滞在制作において、YCCCは富士山に関連した水脈や地形に関する撮影ロケーションの案内等各種サポートを実施しました。
本シリーズは、日本の象徴的なモチーフのひとつでもある白化粧をした富士山を「外部」から撮るのではなく、「内部・環境」から、写真を通しその姿を見つめる試みです。ふだんから被写体の本質にせまる作品を心がけている平岡さんが捉える、ありふれた富士山のイメージの先にある風景の記録は今後も季節ごとに継続予定。東京都内での展示発表も予定しています。
開催概要
第1回:2022年5月 2泊3日(三島市内)
第2回:2022年9月 2泊3日 (富士市赤渕川周辺、富士宮市村山〜西臼塚の村山古道ルート)
平岡尚子 プロフィール
写真家。1988年生まれ。多摩美術大学環境デザイン学科在学中、ドキュメンタリー映像撮影をきっかけに「記録」に興味を持ち、独学で写真・映像撮影を始める。2011年に同大学を卒業後、撮影スタジオなど数社を経て2016年より写真家上田義彦氏に師事、2020年独立。存在するすべての現象を被写体に、空間と質量の関係性を写真・映像表現を通じて捉えている。
ARTIST COMMENT
『日本』の代表的なイメージとして親しみのある富士山。日本人である自分には、実は富士山についての知見がそこまでなく、雪で白化粧をした富士山のステレオタイプなイメージしかないことに気がつきました。富士山が最も近い場所のひとつである静岡県で、富士山はどんな存在なのかリサーチも兼ね撮影を行いました。
『日本』の象徴の本質を知るということは、日本人の内部=精神を理解する手がかりになるのではないか。そのためには「富士山の内部」をテーマに、「白化粧した山」でない被写体(富士山の内側を通り湧き出ている水、派生してる地形など)を撮影し見つめる必要があると思いました。
富士の登山や滞在を通して、古くに富士そのものを神・崇拝の対象とする思想が生まれ、山麓の諸地方に富士の山神である浅間大神を奉納祭祀する神社が設立されるようになったという歴史を知ることができました。また、富士山関連の水脈やジオサイト、文化遺産登録の理由や構成資産についても知ることができました。このような、意外に知らなかった背景を知りながら自然物( 水・植物)のさまざまな姿を撮影することで、今回のテーマをさらに深掘りして、ステレオタイプではない新たなイメージを生み出せるのではないかと思いました。